Blow ~満ちた月、欠けた月~(Rock Climber) タイトル画面
- シナリオ・演出・BGMのクオリティが高く、純愛エンドとバッドエンドの落差も大きい、完成度の高い鬱ゲーです。
- ヤンデレや邪悪系のキャラクターが好きな方には刺さるキャラクターがいます。
- 攻略難易度が高くシステム面でも難があるため、攻略サイトを参照しながらプレイすることをおすすめします。
一言で表すなら、鬱ゲーという言葉がぴったりの作品です。本作では凌辱事件が学校内で何度も繰り返されます。最初は嫌なキャラクターが被害に遭うため、主人公と同様にクラスメイトの噂話にイラっとはしても、それほど心は痛みません。
しかし身近なヒロインが被害に遭い始めると、同じような噂話が心に刺さるようになっていきます。その噂話が単なるテキストではなく、画面に浮かび上がるように表示される演出も印象的でした。
どうでもいいキャラクターと身近なキャラクターとで感じる落差が、とにかくきつかったです。凌辱シーンのテキストは本当に痛々しいものばかりで、その後の展開もつらいものが続きます。学校側は事を大きくしたくないのか、誰にも話さないよう口止めするばかりで事件をまともに捜査しない。そういう描写が続いてイライラするのですが、そんな中で先生から「だがこれは本人の意思が大事なのだ」と言われる場面には、どうしようもない無力感を覚えました……。
そして極めつけが、被害に遭ったヒロインのその後です。一部を除いて、
主人公たちに転校先を知らせず転校します
傷ついたヒロインを慰めることも助けることもできないまま別れを迎えるという展開が、かなり後味悪く感じました。噂話の描写だけでも心にくるのに、結局何もできないというしんどさが積み重なっていきます。鬱々としたBGMも、この作品の雰囲気をよく象徴しています。
エンディングは全部で10種類あります。
- 事件を黙殺するエンディングが5つ
- 事件を調査して犯人の動機まで判明するが、結局逮捕には至らないエンディングが4つ
- 真犯人と動機が明らかになるものの、逮捕どころか主人公とヒロイン全員が不幸になるトゥルーエンドが1つ
すべてのエンディングで犯人は捕まらないまま日常に戻るという後味の悪さ。そしてトゥルーエンドの後に語られる事件の真相こそ、この作品の真骨頂です。パッケージ裏に書かれたこの一文が、本作を象徴していると思います。
「想い」「願い」それらは純粋で無邪気で、時によって残酷…
本作の事件は恋心から起きたものであり、行為の是非はともかく、動機は誰もが理解できるものです。純粋な想いがあったからこその行動だと分かったとき、すべてが終わった後の虚無感は凄まじいものがありました。専用BGM「記憶」から受ける印象が真相を知ることで180度変わるのも、大きな見どころです。
また本作には、心に残る名言があります。
私は月……。
欠けることもあれば……。
満ちることもある……。
でも決してなくならない。
欠けることがあっても、また満ちていく。
月の満ち欠けを心に例えた、とても好きな言葉です。この言葉が物語のすべての始まりになっているのも、よくできていると感じました。
本作はパッケージからマニュアルまで丁寧に作り込まれています。そこに記されている内容は作中には登場しないものばかりですが、クリア後に読み返すと印象がさらに変わるのが特徴です。まさにゲームというメディアだからこそできる演出だと思います。
ここまで良い点を挙げてきましたが、システム面を中心にいくつか残念な点もあります。
一つ目は攻略難易度の高さです。既読スキップ機能がない上に同じ展開が多いため、どこまで読み進めればよいか分からず、気づけば一度見たエンディングに辿り着いてしまうことが起きやすいです。既読スキップがないこと自体は当時の作品として珍しくありませんが、攻略の難しさや総当たりの選択肢が相まって、かなりやっかいな問題になっています。次回作では既読スキップが導入されたことを考えると、制作側も反省したのかもしれません。
二つ目はトゥルーエンドの洗脳描写が唐突すぎる点です。突然主人公がおかしくなり、それまでの行動や思考とはまるで別人のようになります。なぜそうなったのかの説明が不足しており、非常に残念でした。
三つ目は個別エンディングの短さです。テキストのほとんどが共通で、最後に選んだヒロインとの個別シーンがあって終わりという構成です。マニュアルのサイドストーリーで補完される形になっていますが、それを含めてもやや物足りなさが残ります。
それでも、本作は間違いなく名作です。徹底した後味の悪さと、すべてが終わった後に残る虚無感は、心に刻まれるゲーム体験を求める人にとって、これを超える作品はそうそうないでしょう。




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